Day 2
2014年10月23日
カトマンズ 目玉のお寺をめぐる

カトマンズの朝。5時6時になると、もう外で街の人々が動き出している気配が感じられる。自分たちが滞在している3階の窓から見下ろすとすでに自転車や徒歩、バイクで仕事に出かける人々が細い通りを通っていく。鮮やかな赤いサリー姿の女性の姿も見られる。
地元の人たちの朝は早い。
早朝のうちに少しだけ彫刻の時間をとって、持ってきていた彫刻刀で小さな作品を彫りはじめた。7cmほどのヒノキの小片に彫る誕生仏のレリーフ。お釈迦様の生誕地、ルンビニの地をもうすぐたずねると思うと感慨ひとしおである。
ディレクターのヒロムさんが起きてきたところで、朝のうちにスワヤンプナート寺院に行くことにした。ヒロムDは以前、ロケでカトマンズに滞在した際、スワヤンプナート寺院まで歩いていったことがあるという。
「適当に歩いてますよ」 のちほど、歩き出した方向が本当に適当だったことが判明する。
はじめて歩くネパール、見るものすべてが新鮮なので、遠回りだろうが道に迷おうがまあ、いいでしょう。

カトマンズを歩いて、路上の第一印象
・犬が多い。 野良犬たくさんしかもけっこう立派な体格。犬が苦手な人は大変。
・路上はきたない ごみがちらかってたり、舗装もあったりなかったりがたがただったり
・商店はたくさん カトマンズの中心街はずらっと小さな商店がたちならんでいる。観光地なのでおみやげもの屋さんもたくさん。
・交通ルールは自由 車線が区分けされていない中を犬がとおり、バイクが通り、車が通り、人が通る。牛も横切る。車間距離やすれ違いはすれすれ。信号はほぼない。ただ、道が混んでてたいして車やバイクのスピードは出てないので、慣れれば広い道でも車をぬって横断できる。
・にぎやか 朝から町中の道は人々の声やクラクションであふれている。ネパールでもインドでも、ホーン(クラクション)は緊急時に鳴らすものではなく、すれ違うとき、抜かすとき、人にどいてもらうとき、いつでもしょっちゅう鳴らす標準機能だ。

スワヤンプナート寺院をめざして日本人の旅人2人はずいずい歩いていた。
私のほうはまだ慣れぬ旅にとびこんだばかりで、道できょろきょろしていたら、どんな物売りやらタクシーの客引きやらに声をかけられるかわからないと過剰に身構えているので、道も調べたりする余裕もなく、立ち止まらず歩く。
ヒロム氏のほうは、カトマンズの街は慣れたもののはずだが…なんだかちょっと向きがあやしいらしい。寺院に行くときに越えるはずの川がなかなかあらわれないのだ。もう出発して20分ほど歩いているだろうか。
方向を修正したり、遠くの山にようやく寺院とおぼしき姿をみつけたりしながら、生活感あふれる川のそばの路地をぬけ、橋をわたり、出発から40分ほど経っただろうか、遠回りしてしまったがようやくたどりついた。参拝や朝市の人々でにぎわう、スワヤンプナート寺院の参道だ。
タクシーが何台も列をつくり、朝市では鮮やかな花飾り、野菜果物などが路上にひろげられている。お供え用の火のついたロウソクの屋台もいくつもでている。

スワヤンプナート寺院、別名モンキーテンプル。ネパール仏教の寺院である。マハ・チャイテャと呼ばれる、ブッダの目が描かれた仏塔が目印。もうひとつ、カトマンズで有名な目玉のお寺、ボダナート寺院と並んで、もっとも神聖とされるお寺である。
こちらの寺院の特徴はその立地である。小高い丘の上に立つ絶好のロケーション、、400段ほどの急な石段の上にあるのだ。

多くの観光客でにぎわうなか、山門をくぐる。ささげもののお花や灯明を売る人々、子どもを抱いて物乞いをする女性。石段を上っていくと、さっそくちいさな仏塔の上に猿が親子で毛づくろいをしあっていたりする。モンキーテンプルの所以だ。さわやかな空気、ひとびとの信仰の息づかいなどに感動をおぼえながらも、だんだん石段がこたえてくる。「部活か!」「運動部か!」 と心の中でつぶやきつつ、ぐいぐい上っていく。その気になれば踊り場のようなところにベンチもあって休憩できるようになってはいるのだが、とくに、頂上の直前の石段はなかなかの急角度である。後ろの歩いているおじさんの息のあがりかたが尋常ではない。石段をのぼりきり、左手の小さな小屋で入山料を支払う。頂上広場に出ると目の前に大きな五鈷杵(ごこしょ)と仏塔。仏塔の周りにはマニ車がずらっとならんでいる。マニ車というのはお経の書かれた金属製の筒で、これを回すことでお経を読むのと同じ功徳があるというものだ。マニ車をまわしながら、仏塔を右回りにまわってお参りする。
頂上広場の片隅に一辺5mほどの小さなお堂があるが、そこには参拝の列が並んでいる。あとでわかったが、こちらはハリティ(鬼子母神)をおまつりするお堂で、並んでお参りしたものの、残念ながら花や仏飯などささげ物をする方がとぎれず、鬼子母神の像を見ることはできなかった。
頂上広場は大きな仏塔の周囲に建物が建っていて、仏像がおまつりされていたり、お土産物屋さんやレストランなどもある。そのなかの一軒、ルーフトップカフェ(屋上カフェ)に入って朝食をとることにした。
非常階段のようなやわそうな金属製の階段をのぼる。テラス席と屋内席があったが、もう日差しが暑いくらいになっていたので、とりあえず屋内におちつく。上のほうの階は客はわれわれだけだった。チャイやトースト、ペットボトルの水なんかを注文する。ちょっとお高めだが、観光地価格、山の上価格だ。いたしかたない。
カフェからはカトマンズ市内が一望でき、遠くヒマラヤの雪山まで眺望できる。ブラックカイト(とんび)がとびはじめている。早朝ではなく、上昇気流をつかまえられる9時10時の時間帯からとびはじめるのだと、ヒロムDが教えてくれた。
このカフェの眺めに味をしめて、この旅ではちょいちょい、ルーフトップカフェを利用することになる。
参拝を終えて、タクシーでカトマンズ中心部のタメルにもどる。

ここで、ネパールの電話会社、NCELLのお店でインターネット接続や通話をするためのプリペイドSIMを入手。パスポート+写真、データ通信1GB+通話300RS分、SIM代金とあわせて1800RSほど。店員さんにおまかせでチャージ操作までしてもらって30分ほどで持って行ったSIMフリー携帯が使えるようになった。

ラジェンドラさん宅にランチに招かれる新年休暇のためかラジェンドラさんのご兄弟もいらっしゃってにぎやかな昼食。ダルスープとライス、野菜のカレーなど定番と言えるネパールの家庭料理。おかわりまでして、たいへんおいしくいただいた。

午後からはボダナート寺院へ。こちらは平地の街中にある寺院だが、門をくぐると広々とした空間がひろがっていた。
おおきな仏塔にかかる五色の旗、タルチョーが幾重にもはためいている。
仏塔の周りは建物に囲まれていて、お土産店やレストラン、ヨガスタジオ、ホテルなどが立ち並んでいる。観光客も参拝客もおおぜいいるが、街中のような騒々しさではなく、さわやかな空気が流れている。
こちらの寺院でも近くのルーフトップカフェでチャイをのむ。
まだ時間が早い。もう一か所くらいどこかに寄れそうだ。

カトマンズの街は旧暦の新年のお祝い「ディワリ」の準備で、あちこちで地面に砂絵や花絵が描かれたり、商店街に旗がつるされたり、街のあちこちにある仏塔や祠に花飾りがささげられ、街も人手が多いようだった。

夕方近くになってパタンという地区のダルバール広場に着いた。パタンはネパールの古都で、カトマンズ市内ではなく川をはさんで南側、ラリトプル市にある。歴史ある王宮や寺院が多く残されている地区である。
広場でタクシーを降りたところで、さっそくパタンの観光入場料を徴収され、首にかけるパスをもらう。海外観光客は500RSなり。なかなかのお値段だ。以前ヒロムDが来たときは入場料を取られた覚えがないとのことなので、文化財保護などのために外国人観光客からはいただけるものはいただいておこうという方針になったのだろうか。

タメルまで歩いて帰れるかと思ったが意外と距離があったため、途中でタクシーをひろってラジェンドラさん宅にもどる。500rs たいした距離じゃないのに取られるなと思いながらも、待ち合わせの時間が迫っていたし、ディワリの前夜で街も準備でにぎわう中だったので、大みそか価格かと思い自分たちを納得させる。
タメルのイタリアンレストランFIRE & ICEでラジェンドラさんとタケシさんと夕食。
せっかくなので地元の料理を、とも思ったが、ラジェンドラさんいわく、ネパールの料理はうちで食べるものだ、と。たしかに、この日はラジェンドラさん宅で心のこもった家庭料理のランチをいただいていたので、納得である。このレストランはしゃれたレストランで、ヨーロッパからと思われるファミリーなど、旅行者も多く来て、入り口で席が順番待ちになるほどにぎわっていた。パスタやピザなどをいただく。
夕食の際にこれからの旅の予定表を見てもらい、アドバイスをもらう。しかし、、ほかの人に見てもらうと相当無計画というか、行き当たりばったりの行程表である。
明日のディワリの日はカトマンズですごすことにして、次の目的地、チトワン国立自然公園へはその翌日の朝向かうことにした。チトワンまでのバスの手配、チトワンの宿さらにその先のルンビニまでのバスをラジェンドラさんが手配してくれたので、われわれはおんぶにだっこ。

新年を迎えるべく電飾や旗やランタンで彩られ、夜もまだ活気づいている町を歩いて、レストランから部屋まで戻った。